君に声が届くなら




 ―― ガタッ



後ろからドアが開く音がした。



……なんで、今…
このタイミングで逢うのだろう。



逞に逢いたいと願っている今だけは、
君に…荻原くんには逢いたくなかった





パッと顔をそらし、下を向く。



当然、話し掛けてなんかこなかった。




荻原くんは自分の席から教科書を取り出す。……わたしをチラリと見ることもなかった



 ―― ガラッ


再びドアの閉まる音を聞いて、安心のような寂しいような感情に襲われた。




< 64 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop