君に声が届くなら
―― ガタッ
後ろからドアが開く音がした。
……なんで、今…
このタイミングで逢うのだろう。
逞に逢いたいと願っている今だけは、
君に…荻原くんには逢いたくなかった
パッと顔をそらし、下を向く。
当然、話し掛けてなんかこなかった。
荻原くんは自分の席から教科書を取り出す。……わたしをチラリと見ることもなかった
―― ガラッ
再びドアの閉まる音を聞いて、安心のような寂しいような感情に襲われた。