彼女の日記〜きみを忘れない〜

「俺さ、今、すごい幸せなんだ。あいつと結婚して、家族が増える。反対に、結婚して、あいつと生まれてくる子供を養っていかなきゃならない不安があって。複雑な気持ちなんだ。」


いつも強気な藤谷が、初めて弱音を吐いた。


コトン。


おっちゃんは、俺達のいる机にあった椅子に座った。仕事をしながら、俺達の話を聞いていたようで、


「結婚して、不安になる奴はいねぇよ。結婚してから、『こんなはずじゃなかった』なんて思う事、いっぱいあるぞ。」


ハハハ〜と、おっちゃんは笑う。笑う時に出る顔の皺は、きっと苦労して出来た皺なんだろうな。


「おっちゃん。俺、悩んでるんだ。あいつは、産みたいって、俺の子、産みたいって言ってくれた。俺は・・・正直、産んでほしくないんだ。」



おっちゃんは、何も言わず、うんうんと聞いている。


「あいつは、まだ22歳で、就職先も決まっていて、これからって時に、俺が全て打ち壊しちまったんだ。」

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