彼女の日記〜きみを忘れない〜
「じゃあ、なんて言えばいいの?産みたくないのに、嫌々産む方がおかしいじゃん!」
和佳の低い声が、公園全体に響く。私は、握っていた左右のブランコの鎖の部分をぎゅっと握り締めた。
「そうかもしれない。でも、いくら望まない妊娠だからって命を粗末にするなんて。」
「私だって、仕方ないとか平気で言ってるんじゃないんだよ!悩んだんだ。本当は産みたい。この子を産みたいって思ったよ。」
「じゃあ、どうして・・・。」
「駄目。私、産めない。産んじゃいけないの・・・。」
「だから、どうして!」
下を向いたまま、和佳は何も答えない。
「私、決めたから・・・。」
ププー!
車のクラクションの音に、和佳は座っていたブランコから立ち上がり、車の方へと向かった。
「決めたって・・・駄目だよ!ねぇ、ちょっと和佳、待ってよ!」
車に乗る寸前で私を見た。一瞬だったけど、その目は悲しかった。
和佳は助手席のドアを閉め、車は走り去った。