彼女の日記〜きみを忘れない〜


死んでなんかないもん。おとうさん、ここにいるもん。

ガチャ。玄関の開く音がした。

「ただいま〜。ゆい、いる〜?」

買い物から帰った母親が、ビニール袋を台所の机の上に置いた。

「おかあさ〜ん。」

泣きながら、母親のところまで行った。泣いている理由を聞いた母は


「そっかそっか。さっき、さゆりちゃんとすれ違ってね。挨拶もないから、何かあったのかなぁって思った。」


泣いている私に「ごめんね。」と一言、抱き寄せて頭を撫でてくれた。


その時の「ごめん」が、今でも心の中に残っている。

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