先生VS私
【水野】
“舞踏会のパートナーになってください!!”
土下座をする勢いで頭を下げてきたのは、剣道部の真田さくらさん。
下を向いてはいるが、耳が真っ赤だ。
「こちらこそよろしくお願いします」
それを聞いた彼女は、顔を赤くしたり青くしたり…まさに百面相…。
あまりにも可愛くて、ひたいに手を当てた。
…あまりにも大人気ない行動に自分で驚いた。
自分は冷静で落ち着いていると思っていたのに、今は思考が行動に追い付かない。
何とか平静を装って別れた後、私は溜め息をついた。
自分は、もう恋愛はしないと決めていた。
…ただ記憶を失った主人を見守るためだけに、この時代にいたはずなのに…
どうして彼女が気になるのだろう…?
…自分と同じような役目でこの時代にいるからか…?
……いや、違う…
前世での彼女ではなく、今の彼女が愛しいのだ。
「…なかなか私も平和ボケをしたものですね、まったく…」
しかし、現金な私は舞踏会が楽しみだった。
初恋は叶わない…らしいですが、そんなものはくつがえします。
今はまだ、この想いを胸の中にしまって…