Kiss★恐怖症
「わざわざ持って来なくても良かったのにー」


「ううん。実はね。これ、口実なんだよっ」


「え…どういう…」


「ちょっと待ってて」


野々宮が向きを変え、こちらに向かって走ってくるのが、わかった。


俺の鼓動は、また一段と速くなっていく。


もう一瞬の内に。


「こっちこっち!!」


と、手招きをする野々宮が見えた。


………よし。


俺は、すたっと立ち上がり。


星蘭がいるところへと足を進めていった。


そして。


「……直樹…?」


「どーも…」


目が合い、気まずい雰囲気漂い始めた。


そんな俺らとは逆に。


のーてんきな野々宮。


「ほら!2人とも、しっかり話しあいなよ!!」


俺と星蘭の肩をポンと叩くと。


「じゃあ、私は用事あるから帰るね!」


「え!莉子!?」


「おい、野々宮ちょっと待て!」


俺達の言葉は気にかけず。


お邪魔しましたー、と手を振り、帰っていった。


余計に。


変な空気が2人を包んだ。





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