Kiss★恐怖症
しばらくすると。


「…なあ兄貴」


頑なに話さなかった春樹がようやく言葉を発する。


だが。


視線は逸らしたままだ。


「俺、兄貴らの関係がわかっちゃった―…」


「どういう関係?」


「やっぱり付き合ってねーんだろ?」


そういうと顔を上げ、俺の視線にあわせた。


……核心を突かれた。


いや、まだキス恐怖症のことまでは―…。


「それに、星蘭さん。キスに何か嫌な思い出でもあるわけ?ああなったの、俺のせいでしょ」


と言っている間に、やはり勘づかれているみたい。


ここまで来るとわからなくなってくる。


怪しまれながらも、嘘を突き通すべきか。


それとも。


黙らせる覚悟で話してしまうのか。


どちらも良い方法ではない。


でも。


春樹にここまで勘づかれて。


黙らせることなく、そのままにしておくほうが。


最も危険なのかもしれない。






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