Kiss★恐怖症
それとほぼ同時に。


「くく~っ…あの兄貴の焦りよう…」


自分の押し殺し気味の笑い声も微かに響いている。


奪うっていったら本当に焦ってたな。


それに。


"結婚"なんて単語だしたら、兄貴真っ赤になってた。


やっぱり中学生だ、兄貴らは。


「もう奪う気なんてねぇのに」


もう星蘭さんは兄貴のものだ。


俺や兄ちゃんには振り向きもしない。


それだけ兄貴のことが好きなんだ。


毎回会うたび、その事実を突き付けられて。


少し傷付いた。


でも。


兄貴は優しいから、星蘭さんのこと守ってやれると思う。


……なーんて、本人に言ってはやらないけど。


兄ちゃん(樹)も、なんだかんだ彼女出来たみたいだし。


結婚前提で付き合っているらしい。


「…俺も本気の恋したいな」


できるかな。


―――きっといつか。


俺をわかってくれる奴が現れることを信じて。








俺は、メガネをかけ直し。


「…よし」


また、勉強を始めた。



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