Kiss★恐怖症
だめだめ。


本当の彼氏じゃないんだから。


まあ、あいつが宣言さえしなければ。


皆の前で交際宣言しなければ、こんなことにならなくて済んだのに。


でも、あいつの言葉に照れる原因がわかった。


「とりあえず…」


だから。


だから、ちょっと嬉しいななんて思ってしまったんだ。


「ありがとうね、直樹」


「え…俺?ま、まあ気にすんなって!」


これには、ちょっと赤く染まった直樹を見た。


多分、キス恐怖症を嫌がらなかった。


初めてのこと。


その上、治してやるなんて。


初めてのこと。


嬉しくないわけない。


ムカつくけど、私の存在をちゃんと認められた気がして。


だからなんだね。


"キス恐怖症を治したい"なんて思ってしまうのは。


素直に"ありがとう"って言ってしまったのは。




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