Kiss★恐怖症
――フワッ


一瞬、時が止まった。


…えっ…倒れてない…?


「…あっぶな。俺が腕引っ張らなかったら確実に頭打ってたよ―」


私は。


私は、今。


この人の腕の中にすっぽりと埋まっている。


鼓動が聞こえるんじゃないかってぐらいの距離。


私の鼓動も、色々な意味で大きな音を立ててる。


この状況。


今見たら、絶対に誤解される!!


「は、離してくださぃ…~っ」


相手の胸を押しのけようとするが。


「それは無理。もうちょっとこのままがいいー」


とか言って、さっきより少しだけぎゅっと抱きしめてくる。


こんなとこ直樹に見られたら…。


そんなことを思った瞬間のことだった。


「星蘭ー。何も探ってないだ…ろ……え…?」


両手にコップを持った直樹が、最悪なタイミングで帰ってきて。


抱きしめられているせいで、姿は見えないけども。




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