「好きになるはずなかったのに」
露子はさっと、その少女だらけのケント紙を

ジャングルカラーのキルティングの手提げにしまった。


「また思い出してたんだ?」


「うん?」


目も合わせずに、もう空っぽのガラスのティーポットから何とかお茶をしぼり出そうとする露子をみた冬実は、諦め調子に深いため息をついた。



「いいや、何でもない。

 そうだ、露。今日さ、円谷さん来るから」

冬実はエプロンから鈍く鳴くイチゴを思わせる携帯電話をとり出しながら

いとも当たり前かの様に言った。


その声は落ち着きをはらっているが、どこか音符が見える。



「うん?……うん。何しに来るの?」


お茶を諦めた露子は、またケント紙に向かったが口が妙にとがった。



























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