「好きになるはずなかったのに」
数分後、露子は無理にせがんだ小豆クリーム付きのワッフルが窮屈に詰まったタッパーを裸のままポンチョに隠し
「では」と、簡単に礼を済ませてFUWAFUWAを後にした。
冬実の呆れ顔ったらなかった。
露子はエレベーターのボタンを素早く押したが、エレベーターの位置のランプが1階からじわじわ上ってきたのを見て、何故か嫌な予感がして、すぐ脇の階段で下ろうと、重い鉄製のドアへ逃げるように駆け寄った。
その瞬間エレベーターがチンと音を立て、露子は肩をびくっとさせ慌ててコートを翻しドアの外へ逃げ出した。
階段と云えど真冬の室外と同じ。
荒く吐く息の白さがやわらかく綺麗だった。