「好きになるはずなかったのに」
暫くたち、冬実が円谷の元へと帰ってきた。
でも露子だったら気付くと思うが、いつもの倍は時間が掛っている。
その要因は見れば分かる。
冬実の持って来たガラスの皿の上は、バイキングに行った欲張りさんの様だし
何より、冬実の顔が粉ふいている。
円谷はそれにややおののきを感じたが、紳士らしく微笑んだ。
冬実の他に、ちらちら円谷をのぞいていた客の二人も動機を感じた。
「そういえば露ちゃんは来ないの?この時間なら居るっていってなかったけ?」
円谷は重厚な腕時計に目をやった。
「露はさっき帰っちゃいました。
まだ円谷さんに緊張しちゃうみたいです……
きっと1か月毎日会えばあの子もなつきます。
はい、どうぞ!甘めのピーチティーです、よ!」
「え!1か月?も?」
円谷の向かいの席にルンっとついた冬実は眉根を寄せながら笑った。