【中編】夢幻華
自分の名前を呼ばれたことで、杏が階段の影から顔を出した。

俺と暁のやり取りを聞いて自分が入っていいものかと遠慮したんだと思う。

「杏、来いよ。お前も知ってるだろう?俺の親友の龍也だ。彼女は蓮見聖良さん。龍也みたいな偏屈者でも愛してくれるこの世に二人とない貴重な女性だ。聖良ちゃんならお前もすぐ仲良くなれるよ。」

杏が聖良ちゃんに挨拶すると、ニッコリ笑って『ああ、あなたが杏ちゃん?ずっとお会いしたかったのよ。初めまして。』と杏の手を取って手近なソファーを勧めた。

二人がすぐに打ち解けてなにやらヒソヒソと俺達に聞こえないように話しているのも気になったが、俺は龍也の投げかけてくる視線がもっと気になって落ち着かなかった。



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