【中編】夢幻華
キスを交わしながらゆっくりと杏をベッドに縫いとめていく。

徐々に優しいタッチのキスに変えながら時々瞼や額にもチュッと軽くからかうようにすると、くすぐったいとクスクス笑みをこぼす。

そんな仕草に気をよくして少しずつ出来るだけ自然に耳へと唇を滑らせた。

耳朶を甘噛みし『愛しているよ。』と囁き杏の息が乱れるのを感じると身体はどんどん熱くなっていった。

こんな事は初めてだ。

愛しくて愛しくて…強く抱きしめすぎると壊すんじゃないかと怖くて、それでも抱きしめずにいられなくて…。

今すぐにでも自分のものにしたい気持ちと、このまま大切に綺麗なままでいて欲しい気持ちがせめぎ合い戸惑う自分がおかしかった。

照明を落としてベッドサイドのランプを絞って僅かな灯りだけを頼りにすると杏の表情が今まで以上に艶めかしく見えてくる。

自制…利くだろうか俺。

両手で胸を隠し、恥かしそうに俺から視線を外し身体を硬くする杏はまるで芸術品のようだ。

これが今から俺のものになると思うと、鼓動が異常なほど早く打ち、耳元で五月蝿く騒ぎ立てた。



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