【中編】夢幻華
「杏…お前が欲しい。…覚悟は出来てる?」

俺の問いに明らかに動揺する瞳。まだ心が伴ってこないのはわからないでも無い。
今日の午後、いきなり連れ出して告白して、従兄から恋人になってからまだ半日も経っていない。
いきなり求められても心がついていかないのは当たり前だろう。初めてのことなら尚更だ。

むしろ今すぐに俺を受け入れられたらそのほうがショックかもしれない。

杏って、初めてだよな?ずっと俺を好きだったんだもんな。

よかった…こんな綺麗な身体を俺以外の誰の目にも触れさせたくなんてないもんな。

「あ…たし…何も分からなくて…どうしたらいい?」

「杏は何もしなくて良いよ。俺を受け止めてくれればそれでいい。だけど、嫌だったり痛かったりしたら言って?すぐに止めるから。」

「え?…えっと…途中で止めれるものなの?」

「んー普通は止めたくないけどな。でも杏が苦しい顔するのは見たくないし、あんまり痛い思いもさせたくないから…時間はかかってもかまわない。ゆっくり慣らしていこう。」

「うん…暁に全部任せるから…優しくしてね。痛いのは嫌よ?」

「分かった。痛かったらちゃんと言えよ?」


『痛かったらちゃんと言えよ』


優しさのつもりで言ったこの言葉を


俺はすごく後悔することになった。








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