【中編】夢幻華
真夜中俺はふと目を覚ました。


杏を腕に抱いたまま眠ってしまってからどの位経ったのだろう。

前日から殆ど寝ていなかった俺は、杏の香りに安堵してすぐに眠りについてしまった。
あれは随分早い時間だった気がする。

俺の記憶が正しければ食事を終えてみんなと話していたのは7時半ごろだ。

それから杏が聖良ちゃんと席を外しなかなか帰ってこなかった。

その時点でたぶん8時過ぎだったと思う。

部屋へ帰り杏と眠りに落ちるまでたぶん2時間もなかったと思う。

10時ごろには寝ちまったって訳か?お子ちゃまかよ俺は?

前日から殆ど寝ていなかったとは言え、そんなに早い時間に深い眠りに落ちてしまったのは杏を腕に抱いているという安心感だったのかもしれない。

あぁ、幸せだなあ。もう絶対に離さないからな杏。

杏に頬を寄せてその甘い香りを胸いっぱいに吸い込むと再び眠りにつこうと腕枕で眠っている杏にそっとキスをした。

そのとき…

ようやく俺は目が覚めた原因となったその『声』に気付いた。



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