【中編】夢幻華
「まだ1時過ぎだ。真夜中だよ。もう一度寝よう。」

「うん…ねぇ?誰か泣いてる?」

「あ、んー泣いてるというか啼いているだな。」

「え?誰が泣いてるの?もしかして聖良さん?龍也さんと喧嘩でもしたのかしら。」

「喧嘩じゃねぇよ。どっちかっつーとその真逆。愛されてんだよ。」

「へ…?あっ!」

ようやく意味が分かったらしい杏が真っ赤になった。

「毒だな。杏耳を塞いでろ。」

「え~そんな事言ったって聞こえちゃうもん。」

「はぁ…だよなぁ。テレビでもつけて…って、テレビも無いんだっけここ。」

「どうしよ。気にしないでおこうとすると余計に気になっちゃう。」

「…ったく、あのヤロー何が協力してやるだ。朝になったら見てろよ。」

ブツブツ言う俺に『協力?』と小首を傾げる杏。

やめてくれよー。その殺人的な仕草。理性崩壊すんだろーが。

今の俺にとって、シーツに隠れたその下の素肌は魅力的すぎて、先ほど何とか自制した感情に再び火が付きそうになる。


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