【中編】夢幻華
「あんずっ!」
人々のどよめきと花火の大音響に声がかき消され、人の流れが止まった。
その一瞬の隙を狙って人の間を擦り抜け、一気に杏までの距離を詰める。
男が杏に声をかけ移動しようとしているのがわかった。
これだけの人の流れに紛れてしまったら、今度こそ杏を見つけることは出来なくなるだろう。
手を伸ばす。……後、ほんの数歩の距離。
杏の身長ではこの人ごみの中俺を確認することは無理だろう。
その時、止まっていた人々の時間が動き出した。
一気に流されそうになりよろめく。ほんの数センチまでたどり着きそうだった杏の手が遠のいた。
……っく!
バランスを崩し倒れそうになりながら悔しさに唇をかみ締めたその時、誰かが俺を背中から支えてくれた。
驚いて振り返ると、響と龍也があきれた顔をして笑いながら俺を支えていた。
「ばあか。待てって言ったろ?」
「お前ら…」
人々のどよめきと花火の大音響に声がかき消され、人の流れが止まった。
その一瞬の隙を狙って人の間を擦り抜け、一気に杏までの距離を詰める。
男が杏に声をかけ移動しようとしているのがわかった。
これだけの人の流れに紛れてしまったら、今度こそ杏を見つけることは出来なくなるだろう。
手を伸ばす。……後、ほんの数歩の距離。
杏の身長ではこの人ごみの中俺を確認することは無理だろう。
その時、止まっていた人々の時間が動き出した。
一気に流されそうになりよろめく。ほんの数センチまでたどり着きそうだった杏の手が遠のいた。
……っく!
バランスを崩し倒れそうになりながら悔しさに唇をかみ締めたその時、誰かが俺を背中から支えてくれた。
驚いて振り返ると、響と龍也があきれた顔をして笑いながら俺を支えていた。
「ばあか。待てって言ったろ?」
「お前ら…」