【中編】夢幻華
専門外ではあるがここは医者である父さんと右京父さんを一番分かっている蒼母さんに任せて俺と杏はそっとその場を離れる事にした。

「右京が落ち着いたらお夕飯にしましょうね♪今日はお祝いしなくちゃ。杏の誕生日に加えて婚約祝いもね。」

嬉しそうな蒼母さんの声と、まだなにやら訳の分からない事をわめきながら宥められている右京父さんの声を背に杏と瞳で会話し苦笑した。

お祝いかぁ。
右京父さんには最後の晩餐って感じなんだろうけどな。

陽歌母さんの勧めもあって、俺たちはほとぼりが冷めるまで杏の部屋で待機することにした。

ベッドの縁に腰掛けくつろいだ俺は、杏の手を取り引き寄せると膝に座らせて、先ほどの話を反芻しながら未来を語った。

俺達がこの家で一緒に暮らしているだろう少し未来の話。

そして俺達が結婚しているだろうもう少し未来の話。

いつか俺達に授かる天使の話をしながら遠い未来とその前に常に立ち塞がるであろう『右京父さん』と言う障害をいかにして回避するかを考えて二人で笑いこける。


ずっとこうして未来を語っていこう。

たとえ右京父さんがどんなに邪魔しようときっと蒼母さんと父さんが上手く丸め込んでくれるだろう。

それに俺達には『杏の涙』っていう最大の武器もあるんだし、右京父さんにはどう考えても勝ち目は無いだろうな。


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