【中編】夢幻華
相変わらずキャップを目深にかぶったままの男は腕を組んだ状態で右手だけ鼻から下を覆うようにして顔を隠している。

「おまえだよ。この変態野郎!杏をどこへ連れて行く気だったんだ?」

まったく表情を伺うことが出来ないことに苛立ちを感じ更に大声で叫ぶと、突然男は我慢できないといった様子でクスクス笑い出した。

「遅かったな。やっとナイトの登場か?」

聞き覚えのある声、まさか?と疑念が浮かぶ

男がゆっくりと帽子を取る。


……信じられなかった。



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