【中編】夢幻華
「せっかくこれから二人で河原まで花火を見に行こうと思っていたのに・・・ねぇ?杏」

邪魔が入っちゃったね。と、悪戯めいた表情で杏に笑いかけたその男は、暁を見て今度は噴出した。

「ブワ~~~ッハッハッハッ・・・。さっ、暁・・・おまえすっげー必死で…。あぁおかしい。」

この男の笑い声はカンにさわる。

「ふざけんなよ。このクソ親父!」

頭の中の血管がプチプチ音を立てて切れていくのを感じて暁は冷たく晃に言い放った。

今日ほど父さんの息子であることを後悔した日はないよ、母さん。

なんでこんな奴一人残して先に逝っちまったんだよ。

心の中で茜に泣き言を言いつつ晃を睨みつける。

腕の中の杏はきょとんとした顔で暁と晃を交互に見つめた後、訳が分からないといった様子で暁に瞳で問い掛けていた。

「アハハ…。だって暁が杏を一人にするからじゃないか。ハハハ…」

まだ笑っていやがる。




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