【中編】夢幻華
以前はこんなことなかったのに、最近は女の子という理由だけで無意識に避けていたような気がする。

そういえば、杏を連れて出かけるのも随分と久しぶりかもしれない。


「ねえねえ、さとる。あれほしい~~。」

杏の小さな手を取って人ごみを歩く暁は、杏のおねだりにふと足を止めた。

杏の視線の先には、真っ赤なりんご飴

「あれか?でかいぞ?姫りんごにしておかないか?」

「いや~~~。おっきいのがいいの。」

大きな瞳でウルウルと見上げる杏にかかっては、ひとたまりも無い。

「杏一人で食べるなんて絶対むりだよ。」

「ん~~?いやあ、おっきいの、いっこほしい。」

「だあめ。全部食べたら、ほら、綿飴や、杏の大好きなたこ焼きも食べれないぞ。」

何とか誤魔化そうと杏の好きな食べ物を次々とあげてみる。

暫く考えていた杏は、それでもまだ納得しない様子だ。不満そうに暁を見上げている。

「しょうがないなあ。じゃあ、俺と半分コにしよう?大きいの一個買って、少しずつ食べよう。ね?」

暁があやす様に言うと杏も渋々ながらも頷いた。

「…うん。わかった。じゃあ、たこ焼きも、綿飴も、とうもろこしも欲しいの。それから…」

「そんなに食うのか?」

「うん、さとると半分コだから食べれるでしょ?」

「全部、分けて食べるのか?」

「うん、早くりんご飴ぇ。」

甘えるように訴える杏の声を聞きながらも
とうもろこしを二人で食べてる所なんて絶対友達には見られたくないな、と思った。



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