【中編】夢幻華
「じゃあ暁、杏を頼むよ。僕は行く所があるからね。」

「どこ行くんだよ、父さん」

「ん?茜と話しに行くのさ。せっかく二人が出逢った思い出の場所に来たんだから……。じゃあね」

晃が人ごみに紛れていくのを暁は黙って見つめていた。

晃の見つめる先には次々に夜空の華が彩りを添えている。

それはいつか出会ったこの場所で晃が茜と見つめた夜空なのだろう。

暁は父の愛の大きさと、母の愛の深さを心に刻むように感じていた。


父さん、さっきの言葉は撤回するよ。

俺、今日ほど父さんと母さんの息子で良かったと思った日は無かったよ。

自分の命と引き換えに俺を産んでくれた母さん。

最初は父さんも出産には随分反対したらしい。

俺を産んでくれてありがとう、母さん。

俺を産むことを許してくれてありがとう、父さん。



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