【中編】夢幻華
あなたの隣りで笑う彼女が羨ましい。

『こんにちわ。杏ちゃん、彼はあたしとデートなの。ごめんね?』

そう言って微笑む彼女はあたしから視線を逸らさずに暁に細い腕をからめる。

『彼はあたしのものよ』彼女の心が伝わってくる。

彼女にはあたしの心が見えているのかもしれない。


―――暁を返して―――


ずっとずっと、あたしだけの暁だったのに…。

どうして――

どうしてあたしが大人になるまで待っていてくれないの?

―――暁

こんなにもあなたが好きなのに…。

どうしてあなたの隣りにいるのはあたしじゃないの?

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