【中編】夢幻華
その時、視界の端にクラスメイトで親友の響(ひびき)の姿が飛び込んできた。

慌てて繋いだ手を離す。

不思議そうに見上げる杏を無視して、手をふる友人に声をかけた。

「よお。響、みんなも来てんの?」

「ああ、暁は?ああ、従妹のお守りだっけ?大変だな。その娘か?」

「ああ、まあな…。」

離された手をもう一度繋ごうと伸ばす杏の手を無意識に振り払うと、杏は諦めたのか寂しそうにシャツの裾を握り締めた。

一緒に来ているクラスメイトたちが暁に気付いて集まってきたので、思わずいつもの調子で話し出してしまう。
いつの間にか杏の存在を無視する形になっていた。
杏はつまらなさそうに暫くシャツを弄んでいたが、そのうち退屈になったのか握っていた暁のシャツを離し、屋台のほうへ走っていってしまった。

ふいに離れた杏の手。自分が杏を一人にしたにもかかわらず、突然放り出されたように気分になる。

振り返ったときには、もう人ごみに紛れて青いリボンが見え隠れしている所だった。

「あんず!コラ待て、一人で行くとはぐれるって・・・。」

慌てて追いかけるが祭りの雑踏の中、杏の大きなリボンは瞬く間に見えなくなった。

多分りんご飴の屋台だろうと、人ごみを何とか掻き分けて、やっとりんご飴の屋台にたどり着いたが、杏はいない。


「あんず?あんずっ。どこだ?」

辺りを見渡しても目立つ大きなリボンはどこにも見当たらない。



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