【中編】夢幻華
告白と嫉妬

Side杏

**告白と嫉妬**

はあ…どうしようこれ

ヤッパリ受け取っちゃいけなかったかな?

あたしは学校の帰り道重い足取りでとぼとぼと歩いていた。

でもあんなに真剣に告白されて押付けられたらヤッパリ無理やり返すなんてできない。

好きな人に振り向いてもらえない、対象にすらしてもらえない悲しみは、あたしが一番知っているから

腕の中に両手で抱えているのは、カスミソウと赤いバラの花束。

『明後日誕生日なんだよね?おめでとう』

そう言ってこれをくれた男の子はクラスは違うが同級生だった。

『俺ずっと前から君が好きだったんだ…付き合ってもらえないかな?』

好きな人がいるから…そう断れば良いだけの話だった

でも、言えなかった。

彼が暁をどんなに好きでも想って貰えない自分と重なって…

だから…冷たく突き放す事ができなかった。

『出来れば週明けの月曜日にでも返事もらえないかな?』

そう言って彼は逃げるように走っていった。

あたしの事を好き?月曜日に返事ですって?

花束は受け取ってしまったけれど告白の『返事』はもう決まっている。

どうあがいても、やっぱり暁意外に誰かを好きになるなんて考える事も出来ない。

明後日は暁との約束の10月2日

あたしの16才の誕生日だ。

彼がどこへ連れて行ってくれるのか、毎晩楽しみに指折り数えてきた。

いよいよ後二日と楽しみにしていたのに…

暁への想いが募る中、胸の中がもやもやとして、どうしていいか分からなかった。




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