【中編】夢幻華
派手な音がして響が吹っ飛んだ。

大きく肩で息をしたままの俺を止めるように誰かが羽交い絞めにする。

まだ殴り足りない衝動に駆られ、必死にその腕から逃れようとするが、アルコールの回った体では思うようには振り切る事が出来なかった。

響は何が起きたのか理解できないといった表情で俺を見ている。

その様子にますます苛立ちが募った。

「何なんだよその顔は。俺から杏を奪っておいて、親友ヅラするんじゃねえよ。」

俺の言葉を聞いて呆然としていた響が、それまでの温厚な顔をかなぐり捨て烈火の如く怒りだした。

「ばかやろう!杏ちゃんの事を一番傷つけてる奴の言うセリフか!
誰が奪っておいてだ、勘違いすんじゃねえ。
杏ちゃんを傷つけてるのも、泣かしてるのも、全部おまえじゃねえか。
何でわかんねえんだよ。このバカ!」

響が俺の胸倉を掴みあげて怒鳴りつけてきたが、俺には奴の言っていることが良くわからなかった。


杏が…傷ついてる?

俺のせいで…?

杏と響が付き合っているんじゃないのかよ?



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