【中編】夢幻華
女性の一人暮らしなら、もっとセキュリティのしっかりした所にしてはどうかと心配すると、歩くとギシギシ音がする木造のボロアパートに憧れていたのだと嬉しそうに笑う。

出来ればトイレも共同が良かったとか、お風呂は無いほうが風情があるとか…

金持ちの考えることは解らねぇって思った記憶がある。

世間知らずでどうやら金持ちのお嬢様らしい百合子を拾ってしまった俺は、成り行きで彼女のその後を心配する羽目になり、それから暫くの間、毎日のようにあのカフェで会うようになった。

相変わらず家には連絡をしていないらしく、その事になると話を逸(はぐ)らかされてしまう。

彼女には何が何でも家に帰りたくない理由があったらしい。

その理由は1週間ほどして分かった。

彼女がいきなり俺に恋人契約を持ちかけてきたからだ。

百合子は俺と自分が同じ瞳をしていると言った。

報われない想いを抱いて、寂しさを何かで埋めようと足掻いていると…。

心を見透かされたようでドキッとした。


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