【中編】夢幻華
「去年の年末にさ、忘年会の席ですげぇ飲まされてさ。酔ってて良く覚えてないんだけど何かゲームをしたらしいんだ。その罰ゲームがみんなの前で誰かに告白するか一晩誘うって事だったらしいんだよな。趣味が悪いけど。」

バツの悪そうな顔で話し続ける暁に黙って頷きながらも、その会話から垣間見る暁を取り巻く世界も、友人も、あたしには手の届かない遠い世界で少し寂しさを覚える。

「俺が百合子と付き合っているってみんな知っていたけど、……そのときにサークルの女の一人が自分の部屋に誘ってきたんだよ。
みんなの前だし冗談みたいなノリでだけど?俺さ、酔った勢いではっきり言っちまったんだよな。『俺、杏と似てない女は抱けないんだ。』って」

暁の言葉の意味が分からなくて、ポカンとしていると、恐る恐る『怒った?』と不安げに聞いてきた。

「だからみんな興味深々なんだよ。俺が本気で惚れていて大切にしている女は誰だ?って。まあそうだよな。『杏に似ていないと抱けない』って事は百合子も杏の代わりでしかないって公言したようなもんだから。」

あたしに似ていないと抱けないって?どういう意味?


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