【中編】夢幻華
「杏…俺さ、お前しか見えていないんだ。ずっと昔からさ。今までお前を忘れたくて色んな女と付き合ってきたけれど、みんなどこかお前と似た奴ばかりだった。俺は最初からお前でないとダメだったんだよ。」

「暁…。」

「やっとお前を手に入れた。俺はお前を生まれたときからずっと愛していたんだ。やっと気持ちが通じたんだ。もう絶対に離せない。」

「あたしも…ずっと暁が好きだったから…まだ信じられないの。
暁があたしを好きって言うのは妹としてとか家族としてとかじゃないのかなってどこかで思っている気がする。」

暁はあたしの言葉にはぁ…と一つ溜息を付くと、あたしの肩を引き寄せて耳元に唇を寄せた。

「『杏に似ていない女は抱けない』って意味分かってねぇな。
俺が今まで付き合ってきた女の事は杏も知っているから今更隠すつもりはねぇけど、俺だって男だから好きな女は抱きたいと思うんだよ。
だけど、それはいつだって付き合ってきた奴じゃなかった。付き合っていた女の中に杏の幻を見て、杏を抱いていたんだ。」

暁の言葉にビクッと身体が反応した。

あたしを想って他の女性を抱いていたの?

それって喜んでいい事なのかな?彼女さんたちにはすごく残酷な事なんじゃないの?

あたしを睨んだ長い髪の彼女も

嫌味を言った黒目がちな瞳の彼女も

彼女たちがあたしにどこか似ていたから?


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