【中編】夢幻華
ペンション【Friend】は大人向けの落ち着いた雰囲気で秋の紅葉や金の葉に彩られて美しく映えていた。

暁は車から降りるとあたしをエスコートしてペンションへと案内してくれた。

まるでお姫様のような扱いに頬が熱くなり、真っ直ぐに暁を見るのも恥かしい。

ペンションって言う事は、本当に二人きりでここに泊まるって言う事だよね?

えと、暁はあたしの恋人で…って事は…その…別々の部屋って事はないよね?


戸惑うあたしを余所に暁はペンションのドアを開けた。


『10年、お前をどんなに愛していたか教えてやるよ。』


先ほどの言葉が蘇る。暁が抱えてきた長い年月とあたしが温めてきた深い想い。

二人の気持ちが一つになって、求めあうなら…怖がる事なんて何も無いはずなのに…。


きっと今日は予想外のことばかり起こって戸惑っているんだわ。


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