【中編】夢幻華
もしかして『覚悟しておけ』って言ったせいだろうか?

杏と二人きりで泊まるのは、計算外だった。俺だってああは言ったが心の準備は出来ているとは言い難い。

むしろ感情が暴走して止まらなくなるんじゃないかとそのほうが気がかりだったりする。

ここへ来るつもりではいたが、食事だけのつもりだったし、来るのは明日の予定だった。

このペンションだって本来なら簡単には予約が取れないらしい。

どういう手を使ったのか知らないが、この急な予定変更を誰よりも喜んで、あっという間に予約を手配したのは陽歌母さんだった。

母さんは俺達二人の気持ちにずっと前から気付いて、こうなる事を望んでいたのかもしれない。


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