The ring is a cupid
学校から例の文房具屋さんはさほど遠くはない。


駅と近い学校なのだ。


冷たくなった手に息を吹きかける。

そんな動作を繰り返している内に、お店に着いた。


「あれ、私達以外お客さん居ないのかな?」

先に入った朋ちゃんがそう言うから、私は後ろからひょこりと顔を出してお店を
ぐるりと見渡す。


「本当だ、誰も居ない…あっ」


奥へ進むのをためらっていると、レジの奥から女の人が出てきた。

その人は私達を見つけると、すぐにほほ笑んでいらっしゃいませ、と言ってくれた。


長い髪を綺麗におろしていて、色白。

大和撫子。


そんな印象だ。


「ど、どうも」

焦って噛んでしまった。


ぎこちなく、店内をうろつく。


赤とピンクのペン…


たくさんのペンが並べられた所で、赤とピンクを探す。

その二色だけでも、数多くの種類のペンがあって、しばらくその場から動けなかった。


「ん~…これと、これ…かな」


同じ種類の赤とピンクのペン。


少しレース柄が入っていて、可愛い。


「あ、でもこれも…」

買うつもりの無かった青とオレンジのペンにも心惹かれる。


買っちゃおう。

私はさらに2つのペンを手にとってレジへと向かった。


すると、朋ちゃんが丁度お会計中で商品を受け取っている所だった。


「一体何本買ったの?」

「15くらい?」

ピンクで女の子らしい袋に入ったたくさんのペンを見せながら、言う。

そんなに筆箱に入るのかな?

疑問に思いながら、レジへとペンを出す。

ふと、側にあったストラップに目が留まる。


いや、ストラップとよぶのは正確ではないかもしれない。

一本の糸にリングが2つついている。

特に柄がないのかと思ったリングだが、裏に何か書いてあった。


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