The ring is a cupid
朋ちゃんの言っていたことが、妙に心につっかえて、もやもやした。


「あれ、何で帰る用意してるの?」


理沙は、不思議そうに辺りを見回す私を見て、
「今日は先生達の都合で早帰りって、昨日聞いてない?」

ああ、そっか!私が納得した表情を浮かべていると、理沙はクスリと笑って、じゃあねと手を振った。


私も急いで鞄に荷物をつめる。


帰ろう。

椅子から腰を上げて、教室を出ようとしたその時。


「的場」

振り返ると、そこには野山がいた。


「何?宿題ってどこやるんだっけー、とか聞かないでよ?」


笑って野山に言う。

でも、その顔はいつもと違ってどこか真剣だった。


「ちょっと良い?」

「うん」


野山と一緒に廊下を歩くなんて、初めてかもしれない。


そんな事を考えながら彼の背中を見つめて歩いた。

いつの間にか屋上に来ていた。


「急にごめん」


らしくないのは野山の方じゃん。

心の中で呟いた。

ごめん、なんて私に言ったことないのに。


「ほんとだよ。どうしたの?」


これから野山が言うことを、全く予想出来ないのは、私が鈍感だからなのか。


「俺…俺、ずっと的場が好きだったんだ」



頭が新品のノートのように真っ白になった。

野山が?私を?

いつからなの?


「あ、あの…」


言葉が出なくて俯いてしまう。


ハッキリしなきゃと思う反面、怖いと思ってしまう自分が居る。

友達として、大切だったから。

気が合って、口げんかしてる時でさえも楽しかったから。


ごめん、その一言が言えなかった。
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