JUNKETU ~首筋にkissの花~


「はーい、授業始めるよぉ!席ついてぇ!」



ミツとの話しは次の授業の担当教師が教室にきた事でとりあえずの保留となる。


つまんないの、とぶつぶつ言いながらミツは自分の教室へ帰っていった(多分)。


特に勉強好きってワケでもなく、学校に留まる理由もなかったのだけど…




「さて、授業を始める前に今日から新しいALTが来てるんで紹介するね!入ってください」



小柄の英語教諭が手招きすると、スラッとした長身の男性教諭が入ってきた。

途端に教室中の女子が色めき、黄色い声を上げた。



艶々の黒髪と金色の瞳が印象的な男性教諭は聞き取り安い英語で自己紹介する。


その声と仕種に誰もが溜め息をつき、隣にいる英語教諭も頬を染めている。



ジュンは――――



窓際の席のジュンに目をやると、また何かカリカリと楽しそうに内職の真っ最中らしい



無意識に安堵―


え?
なんで俺は安堵してんだ?


吐き出しかけた溜め息を飲み込んだ。




ALTは《アルカディー》とかって名前で《アル》と呼んで欲しいらしい。イギリス出身で、日本には二回目の滞在で一度目は交換留学で来ていたらしい。好きな食べ物はハンバーグで趣味は狩猟とか…



俺には興味のない事ばかりだ。


何気無くパラパラとテキストを捲るとソコにはハロウィンの仮装をして笑っている子供の写真が掲載されていた。


思い思いの仮装は酷くカラフルで滑稽だ。


カボチャランタンを手に笑っている妖怪たち。

魔女だったり、ゴースト(シーツを被ったやつ)だったり、悪魔だったり、妖精だったり、



「バンパイアは日本語でキュウケツキでしたよね?」



突然囁くように話しかけられて、ソッチに目をやると、今しがた自己紹介に勤しんでしたALTが俺のすぐ横でニコリと綺麗な笑顔を向けていた。

なんとも流暢な日本語を操りながら…



「ハロウィンの写真ですね」


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