JUNKETU ~首筋にkissの花~
俺の手元のテキストを指差しながら、



「バンパイアの仮装はとても人気があるんですよ!」



またニコリと笑ってから教卓に戻っていった。


ゾクリと背筋に冷たいモノが走る。


特に何をされたわけではないのに、何かされた様な感覚に指先が震えていた。



授業が進み、英語教諭とアルが英語の歌を歌う。

マザーグースの歌に出てくる何匹かの動物の名前を生徒が答えて、ソレを英語教諭が黒板に書き出していく。


ランダムにあげられる動物の名前。



最後の一匹に当てられたのは



「……ミス、市丸?」


「ぇ、ハイ。えっと……」


ALTに指名されたジュンが最後の一匹を答えて



「グレイトッ」



って…そんなに称賛する程の答えじゃねぇだろっ


ALTがパチパチと乾いた拍手をしながらジュンに近づいていき、手を取る


と―――――!!!



手の甲に唇を落とした。



教室中に広がるさっきとは違う黄色い声と驚嘆。


当の本人はキョトンとしていて、何が起きているか分からない様子だった。



アルはジュンの手を取った反対の手を自分の胸に当てて頭を下げる。

その仕種はまるで―忠誠を誓うナイトみたいだった。



「あのぉ―」



キョトンとしたままでジュンはアルに小首を傾げた。


途端にアルの頬が染まった気がしたのは気のせいじゃないだろう。


パッと手を放すと、sorryと小さく誤って教卓に戻るアルをジュンは相も変わらずのキョトン顔で眺め小首を傾げてまた内職を始めるジュンに溜め息を通り越してクッと喉がなった。



オヤジもよくあんなのを惚れさせ…違うっ

説き伏せたもんだ。



暫くジュンを眺めていると内職が終わったのか満足気な笑顔をしてクルンッのペンを回している。


一体何を書いていたのだろう…



またテキストに目をやると、黒いマントを両手で広げている男の子の横に灰色の犬みたいな仮装をする男の子が笑っているのを見つけた。

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