JUNKETU ~首筋にkissの花~
結局、ジュンに頼まれてアルを校内案内するハメになり、何が悲しいのか野郎二人でペタペタとひたすら歩く事…どのくらいたったのか
「ココが一番端の音楽室、この外廊下をいけばグルッと回って美術室前に戻れる」
「とてもいりくんでいるんですね。迷子になりそうです」
ニコニコと黙って俺の説明を聞いているアルが突然スタスタと歩きだす。
「アルッ!」
無言のままに美術室に入っていき、立て掛けてあったキャンバスを漁り、黒と灰色で塗りつぶされたモノを取り出した。
「コレは私が学生時代に描いたモノです。何に見えますか?」
この学校に交換留学生として通っていた間美術部に所属していたと付け足して、アルは懐かしそうにキャンバスを指でなぞっている。
「何に?」
「ハイ、何に見えますか?」
どう見ても、黒い絵具の渦と殴り書きしたように跳び跳ねた灰色と、朱と金の4つの点。
渦と渦と点と点…
「わかんねぇ」
「そうですか」
俺が首を左右に振るのをアルは確かめると、
「コレは目です」
朱い点と金色の点を指差した。
「目…?」
「これは、バンパイアの目」
朱い点を指差していた指を俺の目を突き立てる様な距離で指さす。
「そして…フェアウルフ、コレは私です。」
キュッと口角を歪めて自分を示した。
「フェアウルフ?」
「ハイ、人狼《ジンロウ》とか狼人間とも呼ばれてますね。私はソレです」
バンパイアがいれば狼人間もいるかもしれないが、いくらなんでもそんな事をいきなり言われても理解出来ない。
「信じられませんか?」
「当たりまえだろ!」
まくし立てるように言う俺にアルは呆れたように数回首を左右に振って
「ヒトナラザルモノは自分だけだと、本当に思っているのですか?」
酷く歪んだ笑顔の向こう目は笑ってなどいなかった…