JUNKETU ~首筋にkissの花~
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紺と紫とピンクが空にグラデーションを描くよくやく家路についた。
バンパイアだのフェアウルフだの、ヒトナラザルモノだの
アルの金色と漆黒が頭の中を渦巻いている
『ヒトナラザルモノ…』
勿論自分以外にもそういったヤツがいるんだろうなぁとなんとなくは思っていたのだけど、ソレがこうも近くにいるとは思えなかった
からかわれたのかとも考えたが、あの金色の目は少しも笑っていなかったし、なによりアルの今日最後の言葉が気になる。
「―彼女からは美味しそうな香りがします」
スッと細めた目には俺は映っていなかった
玄関を開けると芳ばしい香りが鼻孔をくすぐった。
肉とバターの焦げる匂いとクツクツと野菜を煮込む匂い―
「ただいま…」
「おぅ!」
俺を出迎えたのはジュンではなく、ネクタイを緩く絞めて、カフスを整える
「オヤジ…」
「お帰りぃ!俺はこれから会社だけどな」
俺と同じ色の髪を後ろに流して、見ようによってはホストの様なオヤジの向こうに見えたのは
「ジュンッ」
リビングのソファーに横たわる青白い顔のジュンに思わず駆け寄る。
首筋の傷から少しだけ血が流れていた。
「オヤジ、何したんだ?」
「何ってナニだよ?ちょっといつもより量が多かったらしい…」
全然悪びれた様子もなく、ネクタイを絞め直すオヤジは横目で俺とジュンを見てから、
「他の種族の匂いがしたから確かめた」
「他の?」
「うん。気付かなかった?ジュンは時々あるんだよ、狙われやすいんだろうな…可哀想に。で、今日はソレが色濃く感じた。だから確かめたってワケ」
「確かめ…」
「彼女には純潔でいてもらわなければならないから」
大丈夫、まだ抱いてないよ…とスラッと付け足してオヤジは二階に上がっていった。
全てお見通しってか?
今の話しだと俺の気持ちも気付いているのだろうか…