JUNKETU ~首筋にkissの花~
そう言いながらも自分では抑えられない震えに上手くコップに水も汲めない始末。
「ねぇ、本当に大丈夫なの?」
そう言って冷蔵庫からペットボトルの水を差しだしてくれる女の腕には赤い花が幾つも幾つも咲いていた。
「コレどうしたの?」
腕の赤い花は噛み痕に良く似た傷で綺麗な円を描いていて、万華鏡の中に咲く花の様に幾重にも広がる痕は本当に小さな赤い花の様なだった。
グッと手首を掴んで持ち上げる。
俺に腕を捕まれた女は俺から目線を反らして
「多分、虫刺され…かな?」
虫刺されの痕なんかじゃないって事は一目瞭然で
「コレ噛み痕じゃね?」
「ぁ、友達の所の仔犬かも!凄くヤンチャな子で…」
目がキョロキョロと世話しなく揺れているのに本人は気付いていないらしい
「別に気にしないよ。アンタが誰と何しようと、俺は何も感じないから」
「ハルッ!!!」
一際大声で俺の名前を呼んだと思えば、泣きながら抱き着いて許しをこう。
「ごめんなさい。あたし…あたし…」
つまりアレだ、
他の男とアレして、痕をつけられた…ってワケだ。
「だから別に気にしないって言ってるじゃん」
「でもっ」
さっきから泣き止まない女は必死に言い訳をしながら、いかに自分が悪くないかを主張していた。
「あのさぁ…」
「あの金色の目に惹かれたの…」
「え?」
「凄く紳士的で綺麗な顔立ちしてて…英語と日本語を上手に使ってて」
まさか…
「日本には語学教育に来てるって…」
多分、俺の予想が当たっているのなら、
相手はアイツだろう。
黒髪の人狼―
そして、ヤツの結界にまんまとハマりそうになった…
アイツのお手付きした獲物を盗ろうとした(実際は俺のを盗ったんだけど)俺がアイツの結界に引っ掛かったって感じだな。
じゃ、さっきのアレはその反応だったのだろうか…