JUNKETU ～首筋にkissの花～

「…………ぁ痛っ」




一瞬何をされたのか分からなくて､首筋に感じたチクリとした痛みに視界が歪んだ｡

嗅覚を魅了していたオヤジのモノではないジュンらしい甘い優しい香りがその痛みで一気にぶっ飛んで…



「何！」


「血ぃくれにゃにゃん！」



ペロリと出した舌先に少しだけ赤いモノが付着している｡




「ハル君のってこんな味なんだ」



何が可笑しいのかクスクスと笑っている｡




「気になってたんだよね…血の味って｡へぇ､しょっぱい…ぁ､でも鉄っぽい味もするかも」



唇を尖らして､ムグムグと味わっているらしい…




「お前…もぅイイ｡なんか萎えた」



無邪気に笑う様にすっかり毒気を抜かれてしまったらしい｡

さっきまでの猛りとか葛藤とか激動なんかは跡形もなく消えてしまって…

残ったのは､




「バカみてー」


「なっ､誰が…」


「おーれ！」


「なにそれ？」


「なんでもない､気にしないで」



首を傾げたジュンの頬を撫でてやって､二人して笑った｡


すっかり和んだ空気に溜め息が溶けてく｡

何もなかった事に､しなかった自分に少しだけ安堵した｡




ジュンはこんな感じで今迄も自分の貞操を護っていたのかもしれない｡


無邪気は《邪気が無い》と書くから､邪気の塊である《ヒトナラザルモノ》から邪気を払って…



手を出す､出さない出はなく…出せないんのかもしれない｡



という事は…一番の心配は貞操ではなく

《食》される事｡

身体を魂を生滅させられる事｡



…………………………
…………………
…………


「ジュン？」


「………」



突然肩にかかった重みに隣に座っていたジュンを見るとスースーと寝息を発てて眠っている｡


まるで子供…


そんな寝顔のジュンが俺にもたれ掛かっている｡



完全に安心しきってるし…