JUNKETU ~首筋にkissの花~
最後に婆さんにあったのはイツだったろう…
たしか、お袋が入院していた時だった――
葬式の時は婆さんは来てなかった気がする。
純血のウチの一族で純血を遺しながらも何故か長生きな婆さんは、オヤジの会社の会長もしているくらいに達者なババアだ。
いや…クソババアだ。
俺はあの婆さんが子供の頃から嫌いだった。
酷く冷たい目をした婆さんは全てを見下したように常に上から目線でモノを言い、自分を押し付ける。
あのババアが白と言えば黒でさへも白と一族の連中は言う…それは暗黙の掟のように―――
「で、なんだってんだよ…」
黒い手帳とパソコンの画面を照らし確認しながらオヤジは会話を始めた。
「お婆様に呼ばれた。」
「はぁ?」
「俺は今日の便でお婆様のところに行かなくちゃなかなくなった。」
「今日って、何そんなに急に?」
「お婆様な…体調が悪いらしいんだわ」
「へぇ…、あの人殺しても死ななそうだから大丈夫だろ」
「あはは…。まぁ、そう言うなって。そこは一族の長だからいろいろあるんだよ………っと、これで終わりっと!」
タンッとパソコンのキーを叩いてからパソコンもしまいだす。
「で、だ!こっからが本題なんだが…、今回はお前も呼ばれてる。」
「俺?ヤダよ!行かねぇからな」
「ダメだ!ってもどうせ拉致られるから拒否権はないんだけどな…」
「はぁ!意味わかんねぇし」
「とにかく、お婆様は何かハルに伝える事があるそうだ。」
「オヤジからの伝言じゃダメなのかよ」
「それは…、とにかく!お前は土曜の便で来てほしい。」
「だから意味わかんねぇっての!」
「それからジュンは…土曜までウチから出すな。お前がアッチに行ってる間は…あぁ、あそこで預かってもらうか…」
「はぁ?」
まったくもって1ミリも意味が分からない。
俺が呼ばれた理由も、
ジュンを監禁する理由も、
オヤジは携帯で誰かと電話している。
所々でジュンの名前が出ていた―――