JUNKETU ~首筋にkissの花~
「今日は出掛けないの?」
ペタンの床に座り込んだ姿勢で指先に絆創膏を巻きながら上目遣いに俺をジッと見てくる。
「今日は?」
「うん…。だって毎晩出掛けてたでしょ?」
「まぁ…。でも今日は行かない」
「そうなの?」
「ん、今日はもうショクジしたから」
絆創膏の巻かれた指先を指差して、
「お前さぁ、もう少し栄養摂れよ。また貧血で倒れるぞ」
まぁ、アレは過剰に俺とオヤジに吸血されたからだったんだけど
「あはは、鉄分のサプリをなるべく採る様に頑張ります」
「サプリメントって…」
「だってレバーとか内蔵系苦手なんだもん」
「ガキか!」
「ガキだもん!でも食べれないワケじゃないよ?苦手なんだもん!」
ムキになる辺が尚もガキなんだっつーの
「まぁ、いいや。俺風呂入ってくるわ」
まだムキになってる様子のジュンをリビングに置いて、俺は風呂場に足を運んだ。
遠くで犬の遠吠えしているのが聞こえる。
1頭?
違うな、2、3…
お互いを呼び合う様に何度も何度も吠えている。
俺――今日は疲れてんのかな、やたら眠い………
湯槽の中でうとうとと意識が次第に遠くなっていく。
体温より幾分か熱いお湯はまるで母親の胎内にいるみたいな気にさへなれる。
このまま眠ってしまいたいと本気で願ってしまいそうだ。
ガサガサッ―
もう少しで、本当にあと数秒で眠りの波に飲まれてしまいそうだったのを覚醒させるほどの物音にハッと目を見開く。
風呂場の曇りガラスからはよくわからないが―
庭に野良犬が迷い込んだのだろう
そう思い込む事にして風呂からあがる。
やたら至近距離にさっきのモノよりも凄味の効いた遠吠えが聞こえた気がした。