JUNKETU ~首筋にkissの花~


咥内に香る鉄みたいな薫りに欲情させられる。

広がる味は涙の味に近いとか、そうじゃないとか、


口角を伝う滴を舌先で拾うと



「なんって事を…」



ソイツは俺の口の中のソレと同じ味の雫を流していた。



情事の後を連想させる高揚した頬で俺を睨み付けて、肩で息をしている。

そしてまた床にペタンと力なく座り込む。



喉が渇く。

たった今、ショクジをしたばかりだと言うのに喉が渇く。

まるで砂漠の中を歩いている様に喉が渇く。



この感覚を俺は知っている。

ただ、信じられないだけで…




「まさか…お前…処女?」

「………」



飲み込めない事実を確かめ様も絞り出した質問に回答主は無言の解答と共に小さく頷いて見せた。



「だって、お前はオヤジと結婚して…、つまりヤッテ………」


「シテないよ!トウマさんはあたしの血を吸うだけだから。あたし子供だから…」



吸血鬼が処女の生き血を求めるのは、自分の中の汚れた血を浄化したいからだと聞いた事がある。


よく血を吸われると、吸われたヤツも吸血鬼になるとか言うけど、アレは吸血鬼にされたのではなくて、自ら吸血鬼に墜ちたらしい。


血を吸われた事で芽生えた恋心に食い殺されて、身も心も吸血鬼に捧げてしまった

つまり、
吸血鬼を愛した結果だ。



「お前…」


「トウマさんはね、あたしの血が気に入ってあたしを引き取ってくれたの。あたしムダに血色イイでしょ!だからどんだけ吸っても死なないカラ!ってゆーか保存食?」



小首を傾げておどけて見せるけどその表情は何処か寂しげに見える。

そんな彼女を俺は無意識に抱き寄せていた。



「そんな理由でなんで結婚なんかしてんの?お前バカだろ?」


本日二回目の抱擁に手のひらを押し出しながらの抵抗を見せる。



「バカって…お母さんに…」


「だから認めないっつーの」



口調は幾分か弱々しがまだ母親を主張しやがる…
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