ゴスロリ彼女のキスの味


「早いね」と、学校が臨時休校になったというのに、制服姿の倉吉が顔を出す。


 さっきの音の源は玄関ドアの内側に仕組まれている蛇腹式の扉らしい。


「随分厳重なんだな」

 本当はすぐにでもゼロの様子を聞きたかったが、なんとなく倉吉が不機嫌になる気がして、柔らかい会話から入る。


「この建物は地元の地場銀行として明治時代に建てられたものなの。国からは文化財に指定したいって要望がくるけど、おじいちゃんは頑なに断ってる」


「どうして?」


「国の重要文化財になると改築とか勝手にできなくなって、いろいろと面倒なのよ。さぁ、入って」

 倉吉はやや自慢げに語りながらおれを家の中へと招く。

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