ゴスロリ彼女のキスの味


 歩くたびにギシギシ音が鳴った。


 部屋の角にどっしりとしたストーブと石油が入っていると思われる赤いポリタンク、隅に座布団が山積みされ、壁にネジ巻き式の古時計がかかっていた。


 古時計は文字盤と振り子室が丸みのあるフォルムで上下に重なり、雪だるまを連想させる。


 1階はガラ~ンとして田舎の集会場のような雰囲気。


 生活感がしない家だなというのが率直な印象。


「宇宙船に招待されたような顔してるよ」

 おれが物珍しそうに目をキョキョロさせていたせいか、倉吉が愉快そうに笑う。

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