ゴスロリ彼女のキスの味


 もしかすると、倉吉は刃物などの凶器をゼロに突きつけている可能性もある。


 おれを殺そうとしたゴスロリ女がゼロならば、倉吉を簡単に片付けることができそうな気もするが……。


 決断を躊躇して取り返しのつかないことになってしまうかもしれないし、逆に勇み足をして危険な目に合わせてしまうことも考えられる。


 切迫した場面なのに、おれの態度はまたしても煮え切らない。


 グツグツ鍋で煮ても硬くて型崩れしない意志の持たないただの肉の塊だ。


「蜜姫さん、あなたは私にお願いできる立場じゃないの。おわかりかしら?」

 倉吉の棘のある言葉は、おれの不甲斐ない部分を忘れさせてくれた。

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