ゴスロリ彼女のキスの味


 おれは入学式の日に配布された緊急連絡網のプリントが鞄に入れたままだったことを思い出し、引っ張り出して、奈良橋という顔が浮かんでこないクラスメイトに電話した。


 奈良橋に『あ、そう』とひと言だけ返され、「次の人に連絡してください」と事務的な口調でさっさと電話を切る。


 すでに事件のことを知っていて、学校が休みになることは想定内の様子。

顔の知らない奴にゼロのことを聞くのは良心が邪魔をした。


 緊急連絡網にはクラスメイトの名前と固定電話の番号が印刷されていて、視線がどうしても蜜姫零のところでとまる。


 ケータイの番号は自己申告制で、記入されている数は少ない。


 残念ながらゼロは固定電話の番号だけ。

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