学園(姫)
とりあえず、手は離したほうがいいだろう。

でも、この柔らかい手が悪い。

吸い付くように離れないではないか。

背後の乾も今だ動いていないところ、案外、今の状況を楽しんでいるのかもしれない。

龍先輩の危機とは取っていないようである。

「丞、そなた、何を考えておる?」

「ええっと」

暴走行為が仇となったな。

「正直に答えよ。然すれば、許さん事もない」

これからの事を考えると、正直に答えたほうがいいだろう。

「その男が龍先輩の事を思い出して迫ってきたら、どうするのかなあって」

「なるほどのう。それに答える前に、その手を離す事が先決じゃ」

「い、いやあ、手がいう事を聞かないというか」

「ワラワの一撃が良いか、それとも、光蔵の一撃が良いか」

「出来る事なら、どちらも遠慮したいですね」

自然と手を離した。

「そなたは、自分の言った真摯な姿勢であるべきじゃ」

「は、はあ、すいません」

眉を逆八の地にして怒っている姿も可愛いな。

決してエムではないが、龍先輩に足蹴にされるならそれもいいだろう。

「むー、聞いておるのかえ?」

「聞いてます聞いてます」

「こほん、それで、アヤツが帰ってきた場合の事を考えておったのじゃな」

「心配して、夜も眠れませんよ」

「どうもせぬ」

「はい?」

「どうもせぬと言ったのじゃ」

「ええ?本当ですか?」

「そなたも正直に話したのであろう?ワラワが嘘をついてどうする」

全身のこわばった力が、抜けていく。
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