学園(姫)
「それは、良かった」

「何年連絡を取っておらぬと思うておる」

「なるほどなるほど」

そう言いながらも、安心はしていない。

何故ならば、人の気持ちという物は解らない。

それは龍先輩であってもだ。

今の不安な状況下で迫られた場合、ないとはいえない。

「そなたは、余計な事に気を使いすぎじゃ」

腕を組みながらも、俺を叱咤する。

「まずは、精神と肉体を鍛えなおさねばならぬ」

「ええ?」

「散歩は仕舞いじゃ。今から走るぞ」

龍先輩は否応なく走り始める。

「ちょ、ちょっと、待ってくださいよ!」

「付いてこなければ、そなたと会話はせぬ」

「それは、困る!」

そう言いながらも、俺は龍先輩の後ろを走る。

乾も無言ではあるものの、しっかりと付いてきている。

武装はしているが俺よりも体力もあるし、動きも速いに違いない。

公園の中を三人でランニングするハメになるとは思いもしなかった。

何分走るのかは謎で、公園を何週もする。

その間は無言である。

それでも構わなかった。

それは、走る先輩を見る事が出来るからだ。

何故にこうも可愛さと美しさを秘めているのか。

しかしながら、俺の肺が爆発しそうになっている。

二人は余裕だが、普段から運動を怠けている俺にとっては地獄そのものだ。

「はあ、はあ」

今にも倒れそうだ。
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